『うつ病と不安症』
日本からオーストラリアに来て大きく変わった生活環境、ホストファミリーや学校の先生、シェアメイト、職場の上司や同僚、恋人や友人との人間関係、理解力に苦しむ英語でのコミュニケーションなど、環境の変化や様々なストレス要因が重なり合い、うつ病や不安症を発症する患者さんは少なくありません。
「うつ病」では憂うつ、悲しい、泣きたくなる、落ち込む、物事に関して興味がない、食欲がない、眠れない、あるいは常に眠たい、疲労感、集中力の低下、外に出たくない、人に会いたくない、死や自殺について考えるなどの精神的症状が主なことに対して、「不安症」では特に理由のない不安感、人前での不安感、落ち着きがない、考え事をして眠れない、死への不安、動悸や発汗、息苦しさや震え、パニック発作、特定の行為に不安を感じる強迫性障害などの精神的症状だけでなく身体的症状まで様々感じます。
実は、「うつ病」と「不安症」はその発症のメカニズムや症状は違うものの背合わせで併発しているといったケースがとても多いのです。特に現在冬のパース、雨模様のぐずぐずした天気が続く日々が数日続くと、なかなか気分もスッキリしません。気分の切り替えができにくいことから、この時期塞ぎ込んでしまい、症状が悪くなる人が多くみられます。
日本のように初めから心療内科や精神科に行く必要はありませんので、ひとりで悩まずに、まずGP(一般医)を受診しましょう。鉄欠乏や甲状腺機能の異常など内科的問題がその原因となっていることもあるため、大抵はまず血液検査が行われます。
「うつ病」や「不安症」の治療で大切なことは、まず心のストレスを取り除き、できるだけ自身を休養させてあげることです。ストレスが学校の勉強や仕事であれば休学や休職を申請する、ホストファミリーやシェアメイトとのトラブルであれば別の住居を探す、英語環境での生活自体がストレスであれば日本に一時帰国するなど、個人の状況によっては難しいこともあるかとは思いますが、可能な限り要因となっているストレスを取り除きましょう。
軽症ならばそのような対処だけでも状態が良くなることがありますが、それができず、症状が続く場合、症状が比較的重度の場合はドクターから抗うつ剤や抗不安剤の服用が勧められることがあります。先にお伝えしたように「うつ病」の併発ケースも多いことから「不安症」でも抗うつ剤の処方をされることがあります。抗うつ剤は毎日定期的に服用し、開始して3~4週間後から効果が出てくるといわれます。効果が出てくると、気分の落ち込みがなくなって、体調が良くなってきますが、服用は良くなったからといってすぐに中止するものではなく、最低6ヶ月から1年は続けることが勧められています。たいてい薬の中毒性や大きな副作用はありませんので、長期服用に関して心配は不要です。抗不安薬はパニック発作などに対して短時間作用型などもありますが、こちらは薬によっては中毒性や副作用が強いものなどありますので、ドクターと相談して指示通りに服用することが大切です。
また、別の治療として心理カウンセリングを受ける方法もあります。GPのドクターでカウンセリングができることもありますし、パースには日本人カウンセラーもいます。学校などではスクールカウンセラーもいますのでお勧めです。話を聞いてもらうだけでも気分がすっきりすることもあります。調子が悪いと思ったら、ひとりで悩まず、せっかくやってきたオーストラリアでの生活を楽しみ、実りのあるものにするために、まずGPを受診して相談しましょう。
今回は『うつ病や不安症』についてお届けしましたが、当地オーストラリアで医療について困ったことや分からないことがあれば気軽に日本語医療センターまでお問い合わせください。