『風邪と抗生物質の効果。抗生物質の投与時期は日豪で違う?!』
先月の6月はパースで記録史上の寒さを更新、6月でこんなに寒いのは驚きです。そして、6月に入って、インフルエンザにコロナ、ライノウイルス中心の風邪が蔓延しました。
インフルエンザを含め風邪は“ウイルス”が原因です。感染症を引き起こす主な病原体には“ウイルス”“細菌”“真菌”があり、これらはその基本構造とどのように繁殖するかの違いで分類されます。薬には“抗ウイルス薬”“抗生物質”“抗真菌薬”があり、“抗生物質”は“細菌”に関して効くもので、“ウイルス”や“真菌”には効果はありません。
のどの痛みや咳、鼻水などの風邪は、様々な種類のウイルス感染によって発症しますが、これらのウイルスに関しては通常身体の免疫機能が有効に働き、たいていは何もしなくても4、5日で軽快します。ただし一旦風邪を引くと、ウイルスに侵されている咽頭や気管支などの粘膜の防御力が弱りますので、その上に細菌の2次感染を引き起こしやすくなります。いわゆる、中耳炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、副鼻腔炎などが風邪から起こる2次感染です。そして、これら細菌の2次感染に対して“抗生物質”が有効となります。
日本ではあらかじめ2次感染を起こさないように、風邪の初期から抗生物質を投与されることがほとんどで、多くの日本人患者さんが“抗生物質”で風邪が治ると信じていますが、たいていは身体の免疫機能が風邪のウイルスを除去して自然治癒ができています。
オーストラリアでは、風邪の初期から抗生物質が投与されることはあまりありません。あくまでも免疫での自然治癒を推奨し、上記のような細菌の2次感染の兆候が見られてから初めて抗生物質が処方されます。ただし、喘息や心疾患、その他の様々な慢性疾患、あるいは他に何かの理由があり、もし2次感染を引き起こした場合、または重篤になる恐れがある場合にはやはり風邪の初期から処方されることもあります。
抗生物質を不必要に繰り返して使うことは、耐性菌の出現(本来効くはずの薬が効かなくなってしまうこと)、菌交代現象(抗生物質の投与により、常在細菌のバランスが崩れ、普段問題ないはずの菌の増殖により問題が生じる)を引き起こすため、気をつけて処方されなければなりません。
今回は『風邪はウイルス感染。抗生物質の投与時期は日豪で違う?!』についてご案内致しましたが、体調不良を感じましたらお気軽に日本語医療センターまでお問い合わせください。